夏の風物詩・麦茶で猛暑を乗り切ろう 〜今一度「麦茶」を深く考える〜

夏の定番となっている「麦茶」。カフェインを受け付けない方は勿論、カフェインを摂っても問題無い方でも、麦茶が恋しくなることはあるでしょう。

元々、麦茶が好きだと仰る方には嬉しい存在なのですが、「コーヒーやお茶(緑茶や紅茶など)は飲めない。麦茶しか飲めなくて辛い」と言ったように、カフェインを摂れないから仕方無く麦茶を摂っていると言われるケースもあるように思います。

もし、「仕方無く」と「麦茶」の間に「取るに足らない」が含まれるようであれば、麦茶も浮かばれません。では、本当に「麦茶 = 取るに足らない飲み物」なのでしょうか? 今回はそんな考えを払拭出来る情報をお伝えしてまいります。

また、「麦茶って本当に大丈夫なの?」と思われる方にも役に立つであろう情報も幾つか綴ってまいります。

麦茶って小麦アレルギーと関係があるの?

麦茶の原材料は大麦です。これと似たようなものとして小麦があります。Wikipediaの「オオムギ」「コムギ」の各項で比較して見ると、どちらもイネ科の植物で、大麦はオオムギ属、小麦はコムギ属にあります。

「大」「小」とあるのは、背丈や実などの大小ではなく、「品質が良く、利用範囲が広いもの」を「大」、「代用品や品質の劣るもの」を「小」と呼んでいた流れから来ているとされています。

今は小麦が世界的に主要な穀物となっていますが、大麦も昔から親しまれた食材だったようです。

さて、小麦アレルギーの引き金になるのは、小麦に含まれる「グルテン」であると言われています。そして、パンや麺類などで引きの良さやもっちり感を出すためには、グルテンが欠かせないとも言われています。

小麦にはグルテンが豊富に含まれており、日本では小麦を「特定原材料」として明記することが義務付けられています。小麦アレルギーやセリアック病(グルテンに対する免疫反応が引き金となる自己免疫疾患)にかかっている方は注意が必要です。

では、大麦はどうでしょうか? 実は、大麦にも僅かながらグルテンが含まれています。そのため、グルテンを受け付けない方が見れば心配するところもあるでしょう。但し「僅か」ということで症状が出ないケースもあるようです。

小麦アレルギーやセリアック病にかかっている方が麦茶を摂る際は「過剰に心配することは無いものの、全くもってアレルギー反応が出ないという訳ではない」と考えるのが良いのかも知れません。

心配な場合は量や摂取を控えたり、病院で検査や診察を受けてみるのが良いのでしょう。

尚、小麦アレルギーほど数は多くないものの、大麦アレルギーもあるという話も耳にします。また、イネ科アレルギーも存在しますので、それらが疑われる場合は十分に注意が必要です。

麦茶は緑茶よりも歴史が古い?

全国麦茶工業協同組合の公式サイトによると、大麦の栽培は今から約13,000年前に、イランやイラク、チグリス・ユーフラテス、インダス川流域など古代文明発祥地で行われていたとあります。

これが日本に伝来したのは縄文時代末期で、栽培植物として広まったと言われています。日本だけで見ても実に2,500年以上もの歴史があるということになります。

大麦を煎って飲み物にする習慣も古く、戦国時代には武将たちが好んで飲んだともされています。江戸時代末期には、麦茶が町人の間で人気の飲み物となり、やがて明治時代にもなると庶民にも広まり、受け継がれていったのです。

日本で「お茶」と言えば「緑茶」が真っ先に思い浮かぶかも知れません。お茶百科というWebサイトによると、奈良時代や平安時代の時点で日本に緑茶があったという記述があり、安土桃山時代には「侘茶(わびちゃ)」「茶の湯」が完成します。

しかし、これが庶民の飲み物になるまでには相当な年月がかかり、大正時代末期から昭和時代初期頃にようやく根付いたとも記されています。そのことを考えると、麦茶の方が早い段階から市民権を得ていたと考えても良いようですね。

先人の知恵 夏に麦茶の理由とは?

麦茶には刺激になる要素が少なく、赤ちゃんでも飲める飲み物として古くから広く知られています。私の友人もかつて、離乳食が始まるくらいの子どもに、水で薄めた麦茶を与えていました。与えていたのが水では無いことも注目すべきでしょう。

「刺激になる要素が少ない」とあるのは、グルテンが僅かに含まれるかも知れないものの、カフェインやタンニンが含まれないことにあります。人工的な保存料や甘味料など、添加物も含まれないとなれば、赤ちゃんにも安心して与えられると考えられますね。

カフェインと夏との関係で注意したいのが「利尿作用」ではないでしょうか。汗をかきやすいところにカフェインを摂ることで、体内の水分が外に抜けやすくなり、脱水状態が出る可能性は否定できないでしょう。

そこで、カフェインを含まない麦茶を摂ると、必要以上に水分が外に抜け出るのを抑え、かつ、ナトリウムやカリウムなどのミネラルを補給することができると考えるられます。

大麦は初夏に収穫され、採れたての新麦を煎った麦茶が美味しいとされるため、夏場に飲む麦茶(古くは麦湯とも言われていました)は格別だったのだろうと思います。

科学の力で分かった 麦茶の知られざる効能

「麦茶は昔から『身体に良い』と言われるのだから飲みましょう」と言うのも悪くは無いのですが、では具体的にどのような効能が期待できるのかを知りたいと思われる方は多いのではないしょうか。

全国麦茶工業協同組合のサイトやWikipedia「麦茶」の項などでも様々な効能が記されています。勿論、麦茶を飲むだけで全てが解決するという訳ではなく、より適切な治療が必要なケースもありますが、参考になることは多いと思います。

それらの幾つかを箇条書きにしてまとめておきます。

● 胃の粘膜を保護する
● 糖尿病の合併症を防ぐ
● 炎症を抑える
● 発がん性物質(ペルオキシナイトライト)の消去活性を持つ
● 血流を改善する(血液をサラサラにする)
● 血液粘度を低下させる
● 抗酸化作用で活性酸素を除去する
● ミュータンス菌(虫歯や歯周病などの原因となる菌)の菌膜生成を抑える など

他にも学術研究が進められており、「単に夏だから」という理由以外でも麦茶を飲みたくなる要素が増えるのではないかと思われます。

香ばしさを出すのに「カフェイン」は要らない

カフェインを含まず、多くの方に安心して飲める麦茶ですが、現代の作り方は昔のそれとは大きく異なるようです。元々は大麦を丹念に煎って、それをそのまま煮出したり水出しにしたりして飲んでいました。

しかし現代においては、煎った大麦を粉砕してパックにしたり、リキッド状のものを水で希釈したり、既に麦茶として売られているものを買ったりするケースが多いです。そうなると、昔のような「香ばしさ(香り)」が飛んでしまっていると言われています。

NHKの人気番組『ためしてガッテン(現在は『ガッテン』として放送中)』で、2009年に麦茶を取り上げた回がありました。アーカイブは無いようですが、私もこの放送を見ていました。そこで、香ばしさを取り戻す方法を紹介していました。

しかし、その方法は麦茶の良さを殺すものでした。何と、1リットルほどの麦茶に対して、ごく少量のインスタントコーヒーを加えることで、昔ながらの香ばしいコーヒーが蘇ると説明していたのです。

カフェインを含まないことが大きな特徴である麦茶に何故、カフェインを含むコーヒーを加える必要があるのでしょうか? 香ばしさばかりを追い求めてしまった結果がこれなのか、と落胆し憤ったのを今でも覚えています。

自ら大麦を煎るのは重労働です。そこから麦茶にするのも手間や時間がかかってしまいます。香りを損ねてもより手軽に麦茶を作れるようにと工夫した結果が粉砕やリキッド化などだろうと思います。あちらを立てればこちらが立たずなのも分かります。

ただ、失われたものを補完しようと、更なる犠牲を呼ぶようなことはしないことを強く求めます。カフェインを受け付けないからという理由で麦茶を摂っている方からすれば、コーヒーを加えることが如何に危険であるかを十分に考える必要があります。

今月のまとめ

日本の夏の飲み物の定番となっている麦茶は、庶民の飲み物という視点で見れば、緑茶よりも歴史が古いと言えます。「昔から身体に良い」と言われていますが、現代の科学によって、具体的な効能なども示されています。

研究は今後も進んでいき、新たな発見が出ることで、夏に限らず飲みたいものになっていく可能性も秘めています。

しかし、現在では手軽さを優先して香ばしさに劣る麦茶が多く出回っています。香ばしさを補完したい気持ちも分かりますが、そこでインスタントコーヒーを加えた事例もあり、そもそも麦茶がどのようなものであるかを深く考える必要が出ています。

万人にやさしい飲み物とは言われますが、小麦アレルギーやセリアック病でグルテンを気にされる方は慎重な対応が必要となるケースがあります。また、大麦アレルギーやイネ科アレルギーの方も麦茶に注意しておく必要があるでしょう。

【参考ウェブサイト(ページ)】

◉ Wikipedia「麦茶」
◉ 同「オオムギ」
◉ 同「コムギ」
◉ 同「セリアック病」
◉ 全国麦茶工業協同組合
◉ お茶百科

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