【シリーズ】エナジードリンクがもたらした功罪 〜2. 法規制は可能なのか〜

留まるところを知らない勢いで拡大していく日本のエナジードリンク市場。新商品が続々と登場し、新規参入企業も増えているとの話も耳にします。私が暮らす地域では、エナジードリンクを特売商品にしたスーパーもあります。

このように、人気と広がりを実感するエナジードリンクですが、その危険性を見聞きする機会も増えていると思います。そこで今回は、エナジードリンクに含まれるカフェインに着目し、その規制や向き合い方を一緒に考えていきましょう。

エナジードリンクを「魔剤」と呼ぶ風潮

インターネット上で「エナジードリンク」の話題が出る時、「エナジードリンク」を「魔剤(まざい)」と呼ぶ方があります。ねとらぼでの解説によると「魔(法のように力が出るドリンク)剤」から、そのように呼ばれているようです。

エナジードリンクの中でも「モンスターエナジー」を指すケースが多いようですが、他のエナジードリンクでも「魔剤」と呼ぶようです。余談ですが「マジ(本当)」の代わりに「魔剤」を使うケースもあるようです。

2017年9月21日にNHK総合で放送された『クローズアップ現代+』に出演していた大学生からも「(受験会場のゴミ箱に捨てられたエナジードリンクの缶を見て)怪しげな力みたいな。魔力みたいな」という言葉が挙がっていました。

エナジードリンクを飲んだ時に感じる「魔法」や「魔力」は恐らく、カフェインによる眠気覚まし作用や、元気が出る(と一時的に思ってしまう)作用などを指しているのでしょう。それらを体感した結果「魔剤」という言葉が出来たのかも知れません。

但し、日本においてエナジードリンクは「清涼飲料水」の扱いで、医薬品のように扱うことは出来ません。厳密に考えると「剤」という言葉は合わないように思われます。

さて『クローズアップ現代+』では、エナジードリンクに対して良い印象を持つ方の中には、エナジードリンクを愛飲するサークルを作ったり、他の飲み物と合わせて美味しく飲む方法を研究したりする方もあると報じていました。

しかし、その一報で「カフェインの過剰摂取」を危惧する意見も出されていました。

エナジードリンクで劇薬レベルのカフェインを摂る危険性も

海外では、エナジードリンクを過剰摂取したことによる「急性カフェイン中毒死」の事案が報じられています。中には1度にエナジードリンクを4缶飲んだものもあったと聞いています。

商品によってカフェイン含有量は様々ですが、『クローズアップ現代+』の中では、エナジードリンクには多いもので1缶に160mgものカフェインを含むものがあると指摘していました。

仮にこの商品を4缶飲んだ場合、640mgものカフェインを摂取することとなります。

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法、旧薬事法)」では、医療分野において1回あたり500mg以上のカフェインを含むものを「劇薬」とみなしています。

このことから、カフェインを多く含むエナジードリンクを1度に大量摂取すると、簡単にカフェインが劇薬レベルに達してしまうことが分かります。カフェインを含むものであれば、エナジードリンク以外でも起こりうることも番組内で指摘されています。

そもそも「劇薬」とは、毒薬に次いで作用が強い医薬品を指しています。微量でも死に至るものや中毒作用が高いものなどが厚生労働大臣によって「劇薬」に指定され、保管や取り扱いには厳重な注意が必要となります。

しかし、先に触れた通り、エナジードリンクは清涼飲料水で、誰でも簡単に手に入れられます。「摂取方法によっては劇薬になり得る」という意識が、カフェインによる事故を防ぐ一手になるでしょう。

若者の中には、エナジードリンクを口にすることが「カッコイイ」「キマっている」などと考える方があります。カフェインには依存性があるため、大量に摂取しても罪悪感を感じにくくなるのかも知れません。

欧米では規制の動きが拡大中

Yahoo!ニュースを通じて報じられた健康産業速報のニュースによると、2018年2月にアメリカスポーツ医学会が小児のエナジードリンク摂取の危険性を警告する声明を発表しました。

ここでの「小児」が具体的に何歳なのかは触れていませんが、子どもが安易にエナジードリンクを摂取しないように呼びかけているということは分かります。

一方、イギリスの大手スーパーでは、2018円3月より16歳以下へのエナジードリンクの販売を禁止し、カナダでもエナジードリンクの製造や販売への規制が検討されていることが報じられました。

日本だけでなく、世界中でエナジードリンク市場が拡大していますが、上記3カ国で見られる対応はそこに一石を投じるものとなっています。「売らない訳ではないが、売るに当っては厳格なルールが必要である」という意識が強いと言えるでしょう。

元々、アメリカでは、清涼飲料水に含まれるカフェインの上限を「100mlあたり20mg」とする規制が、アメリカ食品医薬品局(FDA)によってかけられています。しかし、エナジードリンクでは、この規制を大きく上回る商品が多いことが判明したそうです。

FDAにはエナジードリンクによる健康被害情報が多く寄せられ、死亡事故も2004年から2012年の間に18件あったことが明らかになっています。「たかだかエナジードリンクで」と思う方もあるかも知れませんが、厳しい現実を知っておく必要もありますね。

日本でカフェインやエナジードリンクの規制は可能なのか?

欧米でのエナジードリンク規制の動きを受け、日本ではどうなっているか?と申しますと、2018年3月現在、特に大きな動きは無いようです。むしろ、エナジードリンクの新商品の情報を多く見聞きするように思います。

日本では、カフェインに対して医療分野における「劇薬」の指定がありますが、清涼飲料水に対しての規制は無く、『クローズアップ現代+』の中でも「実際の規制は難しいだろう」という見解が示されました。

厚生労働省は『食品に含まれるカフェインの過剰摂取について』と題して、Q&A形式で注意を呼びかける文書を公表しました。そこには海外での規制の例が上がっており、先に挙げたFDAの規制と併せて参考になります。

しかし、今回公表された文書は「だから日本でも規制をかける」というものではなく、厚生労働省独自の「注意喚起(控えるべきこと)」を示すにとどまっています。この文書の他、カフェインに関する情報を消費者がしっかり読み込んで理解することが大事です。

また、『クローズアップ現代+』では、メーカーに安全性の評価や、注意喚起情報の記載を求める声も上がっていました。注意喚起情報の掲載については、一部のメーカーで既に実施されています。

しかし、注意喚起情報を記載することは「義務」となっていません。番組内でも、あるメーカーが「(商品に情報を記載することで売れなくなるのが)怖い」「売れなくなる要素は1つでも無くしたい」などといった声を上げていました。

消費者の安全や信頼を取るか、メーカーの利益や名誉を取るか。カフェインへの対策を見ることで「メーカーの本質」も見抜くことにもなるでしょう。

今月のまとめ

インターネット上では、「魔法のように力が出るドリンク剤」という発想から、エナジードリンクを「魔剤」と呼ぶことがあるようです。「魔法」や「魔力」と感じられる魅力をカフェインから感じる方が多いことを示しているのでしょう。

しかし、日本では医療分野において、1回につき500mg以上含む場合にカフェインを「劇薬」としています。エナジードリンクの過剰摂取は、劇薬に相当するカフェインを摂取することになるケースもあるようです。

日本では現在、劇薬としてのカフェインの法規制はあっても、清涼飲料水での規制はありません。海外では法規制や企業でのルールが多く存在しており、厚生労働省でも情報提供をしています。既にある海外の規制から消費者が学ぶことが大事なのでしょう。

一部メーカーでは、商品に注意事項を記載するケースも見られます。しかし「義務」ではないことから、記載を躊躇しているメーカーもあります。守るべきものを何としているかを見抜くポイントにもなるでしょう。

【参考ウェブサイト(ホームページ)】

Wikipedia『カフェイン』
同『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』
同『アメリカ食品医薬品局』
ねとらぼ『アイツ魔剤やってるって魔剤? ネットスラング「魔剤」の意味と使い方』

モンスターエナジー 公式サイト
◉ NHK クローズアップ現代+ 公式サイト 『急増!カフェイン中毒 相次ぐ救急搬送 いま何が』
(テレビでは2017年9月21日放送)
Yahoo!ニュース『エナジー飲料、欧米で規制の動き拡大』(ソース元は健康産業速報)
厚生労働省『食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~』

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