優しい香りに癒やされたい 〜アロマテラピーは本来どのようなもの?〜

2018年も残すところあとわずか。早い段階で暖冬の予想が報じられましたが、寒波がやってくるとの報道もあります。この時期の寒暖差が風邪やインフルエンザ、頭痛、腹痛などの不調につながることもあるでしょう。

身体や気分の不調を覚えた際、症状を抑えたり軽くしたりしようと、あれこれ手を考える方は多いと思います。その中で、植物から作られた精油を用いた「アロマテラピー(アロマセラピー、芳香療法)」を考える方もあるでしょう。

アロマテラピーは民間療法です。香りの力で元気づけられたり、気分が落ち着いたりということはあっても、精油が特定の病気を治す薬であると考えてはならないでしょう。

そこで今回は、アロマテラピーとの正しい向き合い方について綴ってまいります。カフェインを受け付けない方にとって、アロマテラピーが頼みの綱のように感じられるかも知れませんが、それはあくまで「正しい向き合い方」が出来てのことと念押ししておきます。

※ 私は公益社団法人 日本アロマ環境協会でアロマテラピーアドバイザーの資格を取得しています。インストラクターやセラピストの資格を考えると不足もございますが、アロマテラピーを知る者として申し上げたいことがあり、今回の記事に至りました。

「●●の香りが■■に良い」は万人に通じるとも限らない

あくまで私個人の感覚ですが、いわゆる「癒やし」という言葉が広まるにつれ、香りで心を落ち着かせるという癒やしも大きく伝えられるようになったと感じています。心が落ち着く香りも様々あるでしょう。

よく「ラベンダーの香りが癒やし(心の鎮静、リラックスなど)に良い」と言われますが、そういった意見が万人に通じるものか?と言うと、そうではないでしょう。香りが合う方も合わない方もあるのです。

2012年頃、私は精油を使った講座にスタッフとして参加したことがありました。受付や資料配布などを手伝っていましたが、講座の途中で急に気分が悪くなって中座しました。廊下で座り込んだり横になったりしても体調は戻らず、最後まで室内に戻れませんでした。

その時に何が起きたかと言うと、ハンドトリートメントの実習にと、参加者が一斉にラベンダーの精油の蓋を開けたのでした。1人あたりの使用量は大したことも無いと思うのですが、一斉に開けたことで香りが充満し気分が悪くなったのです。

その後、3年近くはラベンダーの精油を使うことも嗅ぐことも出来ませんでした。アロマテラピーも私の仕事の一部だったため、致命傷に近いものとなりました。野球で言えば、ピッチャーがストレートボールを投げられないのと同じようなものでしょう。

勿論、変化球で勝負することも出来ますが、入り口や基本となるものでこのような事態になると、対応に苦慮するところもありました。ラベンダーの精油について、どのように説明しようか…とも悩んだものです。

現在は症状は落ち着き、ラベンダーの精油の限度を知った上で使用しているので、大きな問題は発生していませんが、この件を機に「正しい使い方を守った上で、その人が心地よい(ピンときた)香りを取り入れるのも一手です」といった説明を行っています。

また、同じ精油を毎日使うのではなく、複数の精油をローテーションさせたり、精油を全く使わない日を設けたりして「慣れ」を生じさせないことも大事だと考えています。

民間療法ゆえ? トンデモ使用法が広まっている

2018年秋頃、Twitter上にて「マルチ商法(ネットワークビジネス)」で使われている精油の「あり得ない使い方」が紹介され、大炎上する事態となりました。それは私が見ても、絶対にやってはならないと分かる使い方でした。

◉ 精油をそのまま皮膚に垂らしてマッサージをする
◉ 精油を料理に加えて食卓に並べる
◉ その精油を使えば特定の病気が治ると公言する など

上記のような例が多数挙げられ、炎症を起こした肌の写真や、体調不良を訴える書き込みも多く見受けられました。誤った使用法や解釈の広まりに、私も非常に憤りを覚えています。

そもそも「精油」は大量の植物を使って抽出され、濃度も非常に高いものです。原液で触ろうものなら、赤みや痒みなどの炎症が出ても何ら不思議ではありません。私もうっかり触れて特に問題が無かった肌に赤みとつっぱりを覚えた経験があります。

指に傷や逆剥けがある状態で、ミカンやオレンジなどの柑橘類の皮を剥こうものなら、皮からの汁がしみて飛び上がる位に痛いものです。1個の柑橘類でそうなるのですから、何個も使って濃度も高い精油が肌に触れたら異常をきたすのは当然でしょう。

柑橘類に限らず、精油をこのように使って炎症を起こしたところで「好転反応だから」と更に精油を使うというのは到底許されません。自己責任で自身だけが使うのなら兎も角、家族や友人など他者を巻き込んで用いて良い訳がありません。

判断力が十分でない子どもや、体力や肌の機能に衰えが見える高齢者などに使用しているという情報もあり、何としても誤った使用法の広がりを食い止めなければなりません。

そもそも日本において精油は「雑貨」の扱いです。雑貨を食べ物や飲み物と考えるのは無理があります。料理には精油でなく、食用として販売された実際の植物を使いましょう。提供される人だけでなく他の食材にも失礼です。

時に「病院に行く(薬を使う)位なら精油を使う方がマシ」「その精油を使ってから物を言え」などと食って掛かる方があります。私も過去に食って掛かられた1人です。ここに断言します。明らかにおかしい商品や使い方に手を出すつもりはございません。

医療を必要とする場面においてそれを阻止したり、精油が特定の病気に効くと言ったりする行為は、医師法や薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に違反します。

私も医療を必要とする時は躊躇無く医療機関を頼りますし、必要となる薬も処方してもらいます。アロマテラピーで何でも対応出来るとは思っていません。出来ることと出来ないことの線引きは大事です。

日本ではどのような使用法を勧めているの?

これまで、精油の誤った使用法について綴りましたが、では「正しい使用法」とはどのようなものでしょうか? 公益社団法人 日本アロマ環境協会では、アロマテラピーの楽しみ方として「芳香浴法」や「トリートメント法」などを紹介しています。

芳香浴法は「精油の香りを空間に広げて楽しむこと」です。ティッシュやハンカチに精油を1〜2滴落としたり、アロマランプやアロマディフューザーなどで香らせる方法が紹介されています。

ハンカチに落とす際には、シミに注意する必要がありますが、芳香浴法は気軽に楽しめるものと言えます。気分が重かったり、イライラが強まったりした時などに使う方もあるようです。

一方、「トリートメント法」とは、植物油で精油を希釈し(薄めて)肌になじませる方法です。精油の濃度は1%(顔の場合は0.5%)という規定を設けています(子どもや肌が弱い方などには、これよりも低い濃度が勧められています)。

植物油を使うことで、香りによる作用だけでなく、保湿や収れん(肌の引き締め)などの作用も期待されます。植物油は「キャリアオイル」や「トリートメントオイル」などと呼ばれますが、サラダ油といった食用油を転用することは考えない方が良いでしょう。

尚、トリートメント法については、日本アロマコーディネーター協会でも「精油を希釈したトリートメントオイルを使い」行うことを明言しています。2つの協会の見解を見れば、原液を直接肌に垂らす方法が誤りであることは明確です。

芳香浴法やトリートメント法以外にも、アロマテラピーを楽しむ方法はございますが、それぞれに注意事項があり、正しく行うことが大事です。医師法や薬機法、禁忌事項(してはならないこと)などを理解してから実践に移すべきでしょう。

海外では直接肌に付けたり、口にしたりする精油があるとも言われていますが、日本での関連法令禁忌事項などを知れば、安易に真似できるものではないと気づくでしょう。

意外過ぎる植物も精油になる

突然ですが「アロマテラピー」と聞いて、どのような植物を思い浮かべますか? ここまでの文中では、ラベンダーやオレンジの名を出しました。また、写真にあるローズやローズマリーもアロマテラピーに登場します。

アロマテラピーに登場する植物は実に様々で、オレンジやレモンなどといった果物や、ローズマリーやペパーミントなどといったハーブ、ラベンダーやローズなどといった花などが登場します(ラベンダーの精油には花穂や葉も含まれる)。

しかし、中には精油になるのが不思議と思われそうな植物も登場します。料理の味付けに欠かせないコショウ(ブラックペッパー)や、薬味として重宝する生姜(ジンジャー)の精油は、多くの精油メーカーが取り扱っています。

精油にも使われるハーブや香辛料で言えば、ナツメグやローレル(ベイ、月桂樹の葉)、バジルなどもそうです。こういった名前を見て、つい料理に使えそうと思うのかも知れませんが、精油になれば言うまでもなく使えません。

また、嗜好品で言えば、コーヒーやタバコの精油があることも耳にしています。これらは芳香浴法でのみ用いるのかも知れませんが、かなりの変わり種と言えますし、元々が強く推奨される品でないだけに、賛否両論出てきそうです。

日本の植物で精油を作るという動きも見られ、ユズやカボス、ミカンなどといった柑橘類の精油はよく耳にします。また、シソやハッカ、ヒノキなどといった日本のイメージが強い植物の精油もあります。物珍しさで試す方もあるでしょう。

どんな精油であれ、正しく使うことが大切です。また、相場を知った上で商品を手にすることも大事です。難しく感じる面もあるかも知れませんが、安全に楽しむ上では欠かすことの出来ない考え方なので、そのひと手間を惜しまぬようにしたいですね。

今月のまとめ

身体や気分の不調を感じた際に「アロマテラピー」を取り入れる方もあると思います。香りの力で気分がスッキリしたり、イライラが抑えられたりといった経験をされた方も多いのではないでしょうか。

しかし、アロマテラピーは民間療法ゆえに、何に対しても効果があるとは言えません。医師法や薬機法と照らし合わせると、アロマテラピーで使う精油を万能薬のように解釈することはできません。

アロマテラピーの方法については、日本の関係団体により、正しい使用方法や禁忌事項が示されています。しかし現在、それらを大きく逸脱した「あり得ない使い方」が広まっており、SNS上で大炎上する事態となりました。

アロマテラピーを正しく取り入れることには何の異論も無いのですが、誤った利用方法で正しいものを冒涜する行為は断じて許されません。誤った利用法に傾倒する方の中には医療機関をも冒涜する言動も見られることにも強い憤りを覚えています。

多種多様な精油があり、興味関心を引く点も多いアロマテラピーは、正しい知識を知ることで安全に長く楽しめることでしょう。ご自身がその時点でピンときた精油を適度に取り入れるのも、アロマテラピーを長く楽しむ一手となる筈です。

【参考ウェブサイト(ホームページ)】

公益社団法人 日本アロマ環境協会
同『アロマテラピーの楽しみ方』
同『安全に楽しむために』
JAA 日本アロマコーディネーター協会
同『アロマセラピートリートメントとは』
Wikipedia『医師法』
同『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』
にゃんこの暮らしの手帖『マルチのアロマが介護施設にも!? 人生の先輩方の労り方を考えなって』