先走るインフルエンザへの懸念 〜2018/19シーズンはどう対処する?〜

全国的に異常とも言える猛暑に見舞われた2018年夏の日本。この暑さが来ると、秋や冬はどうなるだろうか?と不安に思った方もあるでしょう。

本記事初回投稿(2018年9月15日)の時点で猛暑のピークは過ぎ、秋の空気を感じられる日も見られようになりました。日中は暑い日もあるのですが、実は9月に入った時点で既に「インフルエンザによる学級閉鎖」が各地で起こっていると言うのです。

インフルエンザと言えば、冬の寒い時期に大流行するというイメージがあります。それだけに、この「先走っている」ようにも見えるインフルエンザの状況を見ると、様々な不安がよぎってしまいます。

そこで今回は、2018/19シーズンのインフルエンザに注目し、前シーズンに起きたことや、今シーズンに向けての対策などを綴ってまいります。

インフルエンザは冬だけのものではない

東京都感染症情報センターは、2018年9月3日から2019年9月1日までの1年間をインフルエンザの「2018/19シーズン」として、この期間中のインフルエンザに関するデータを公表しています。

それによると、東京都内では2018年9月3日から9日までの1週間で、既に34名がインフルエンザに感染したと定点医療機関から報告があり、その大半が20歳未満でした。また、学級閉鎖も起きていることも公表されています。

学級閉鎖は何も東京都に限ったことではなく、2018年9月11日までの時点で栃木県や茨城県、京都府や岐阜県などでも行われたと東京新聞は報じています。全国各地でインフルエンザが発生していることに不安を覚える方もあるでしょう。

「インフルエンザ」と聞けば、冬だけのものと感じてしまう方も多いかも知れません。しかし、東京都教育委員会は「2017/18シーズンも9月の時点で学級閉鎖があった」とし、厚生労働省も「例年と比べて特に感染者が多いという印象は無い」としています。

東京新聞の記事では、医療の進歩により「夏風邪」と診断されていたものが実はインフルエンザだったと判明するケースが増えたと指摘する方もありました。インフルエンザは夏も感染するものであると考え方を改めるべきなのでしょう。

また、実際には証明されていないものの「グローバル化」による人の行き来も影響しているのでは?と考える方もあるかも知れません。確かに、8月から9月の南半球は、冬から春に移りゆく時期でもあります。

9月に発生するインフルエンザは大流行(ピーク)時を思うと数は少ないですが、全く起こらない訳ではないと実感させられます。

2017/18シーズンのワクチン不足は何故起きた?

厚生労働省は毎年1月頃、その年に流行するであろうウイルスを予測した上で、ワクチンに使うウイルス株を選定するよう、国立感染症研究所に依頼しています。

2017/18シーズンはA型とB型用に各2種類(計4種類)のウイルス株が選ばれたものの、A型の1つで増殖の効率が悪いことが判明し、急きょ株を変更し、結果として生産と供給の遅れにつながりました。

このことで、予定通りにワクチンを入荷出来ない医療機関が相次ぎ、日本医師会の調査では医師519人のうち464人が「供給の遅れの影響を受けた」との回答があったようです。特に10月の不足が顕著だったとも言われています。

私が予防接種を受けた病院でも、その影響は出ていました。例年であれば在庫があれば飛び込みでも受診可能なのですが、この年は要予約となりました。予約は9月中旬から始まったものの、11月になる頃には「もう遅い」と言われるほどでした。

結局、このシーズンのワクチン製造量は前年よりも100万本少ない約2,491万本となり、厚生労働省は13歳以上の方の接種について、医師が特に必要と認める場合を除いて「原則1回接種」とすることを各都道府県に通達したのです。

実際の使用量はそれよりも150万本近く少なかったものの、薄氷とも言える状況に危機感を募らせた方も多かったと推測出来ます。

2018/19シーズン、ワクチンは足りるの?

2018年9月13日までに、厚生労働省は2018/19シーズンのインフルエンザワクチン製造量が約2,650万本となる見通しを発表しました。この数字は前(2017/18)シーズンを150万本ほど上回っています。

また、今シーズンは突然のワクチン株変更も発生しておらず、適切に使用すれば不足は生じないという見方を示してます。

2018年10月には例年並みの約1,000万本のワクチン供給を可能としており、前シーズンの反省を生かしていると言えそうですが、13歳以上の任意接種については前シーズン同様「原則1回接種」とすることを周知するとのことです。

供給不足の心配は無いとされているものの、前シーズンのことを考えると「確実に受ける」ことを望む方が多いかと思います。医療機関にもよりますが、希望される方は事前に予約をすることも考えるべきかも知れません。

参考までに、先日Twitter上で行ったアンケートの結果を掲載いたします。

ワクチンが無い時点での予防策

インフルエンザは「かかると怖い」病気と考える方も多いでしょう。重症化すると合併症を起こして死に至るケースもあるだけに、何らかの策を打ちたいと思うものです。

しかし、夏でもインフルエンザが発生する一方で、ワクチンの供給が無い時期があるとなれば、日常生活から意識した対策が鍵となるでしょう。うがいや手洗い、マスクの着用などが策として考えられます。

元々、インフルエンザワクチンは「絶対にかからないようにする万能薬」ではなく、あくまでも「かかっても重症化しにくくするもの」と考えるべきです。ワクチンを接種しても医療機関からは、うがいや手洗い、マスクの着用などを勧められます。

日頃から出来る策を正しく続けていけば、それが習慣化されてリスクを少しでも減らすことが出来るでしょう。「マナーのひとつとして行うもの」と考えるのも間違いではないでしょう。

尚、ワクチンの持続期間が接種後5ヶ月ほどと言われる上、シーズン毎にワクチン株を見直していることから、前シーズンに接種したインフルエンザワクチンの効果は2018年9月の時点では無いものと考えられます。

インフルエンザ治療薬に動きあり

2018年2月23日、塩野義製薬は新たなインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」が厚生労働省に承認されたことを発表しました。ゾフルーザは当初、同5月までに薬価が決まると言われていましたが、同3月には決定し、保険も適用されることが発表されました。

2018/19シーズンからは、医療機関でゾフルーザが処方されることもあるでしょう。これまでのインフルエンザ治療薬(タミフルやリレンザなど)と異なり、1回の服用で完結することが最大の特徴となっています。

ハフィントンポストに掲載された記事には、タミフルやリレンザなど従来の治療薬は「細胞内で増えたインフルエンザウイルスが細胞の外に出るのを阻み、周りの細胞への感染を防ぐもの」とあります。

一方、ゾフルーザは「細胞内のウイルスそのものが増えないようにするもの」で、ウイルスが体から早く消えることが期待されるだけでなく、誰かにうつしてしまうことを抑えられると考えられます。

ゾフルーザはタミフルよりも薬価が高く(2018年3月現在)、これからの経過を注視すべき新薬でもあります。実際に服用を決める際は、医療機関で十分に説明を受け、納得をしてからにするのが良いでしょう。

体重が規定量あれば服用出来るとのことで、子どもに対しての処方も予想されます(10kg以上あれば服用可能としている記事もありますが、15kgで算出したものもあり、医療機関で確認する必要があります)。

一方、厚生労働省はタミフルについて、2018年8月21日より10代への投与を再び認める通知を出しました。タミフルと言えば「異常行動」が問題となり、2007年から10代への投与が原則中止となっていました。

今回の通知は、タミフルと異常行動の因果関係が明確でなかったことからなされたものと言われています。異常行動はタミフル以外のインフルエンザ治療薬(リレンザ、イナビル、ラピアクタ)服用者にも見られたとの調査結果が出ています。

また、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタを服用しなかった方にも異常行動が見られたとの報告もあります。今回の通知は「疑わしきは罰せず」の考えなのかも知れませんが、だからと言って「大丈夫」とは言えないでしょう。

製薬会社(日本での輸入・製造・販売は中外製薬、輸入元はF.ホフマン・ラ・ロシュ社)はタミフルの添付文書を改訂することとなりました。新たな添付文書や見解も重要ですが、これまでの経緯も考えた上で実際に使うかどうかの判断をすることが大事ではないでしょうか。

ゾフルーザやタミフルに限らず、薬との向き合い方には十分に気をつけるべきです。カフェインとの関係を考えた場合、タミフルについては「コーヒー粕」が製造段階で使われるケースが多いことを頭に置いておくべきでしょう。

【今月のまとめ】

近年、冬に大流行すると思われていた「インフルエンザ」が9月の時点でも起きており、学級閉鎖に至るケースも見られるようになりました。

冬よりも前にインフルエンザが見られるのには様々な要因が考えられますが、医療の進歩により、これまで「夏風邪」とされていた症状が「インフルエンザ」だったと判明するケースが増えているという報告があります。

前(2017/18)シーズンは急なワクチン株の変更から供給不足に陥りましたが、2018/19シーズンは十分な供給量を確保していることが厚生労働省より発表されています。とは言え、確実に予防接種を受けるには、医療機関への予約も必要になるかも知れません。

今シーズンのワクチンの供給開始は2018年10月からで、それまではうがいや手洗い、マスクなどの対策が大切と言えるでしょう。これらはワクチンを接種した後でも大事と言われるため、習慣として取り入れるのも一手でしょう。

そんな中、「ゾフルーザ」が厚生労働省に承認されたり、「タミフル」の10代への使用が再び認められたりするなど、インフルエンザ治療薬を取り巻く環境に変化が出ています。

効果に期待を寄せたいところですが、これらのインフルエンザ治療薬は完全に安心出来るものと言えないため、実際に使用を検討する際には、医療機関で十分に説明を受け、納得をしてから行動に移すことが大事でしょう。

冬だけにとどまらない「インフルエンザ」の勢い。日頃から出来る対策を地道に重ねることが、事態の悪化を防ぐことにもつながるでしょう。

【参考文献(記事)】

東京新聞(2018年9月12日付朝刊)『こちら特捜部 インフルエンザ 早くも各地で学級閉鎖』

【参考ウェブサイト(ホームページ)】

厚生労働省 「インフルエンザ(総合ページ)」
同 『季節性インフルエンザワクチンの供給について』(PDFファイル)
東京都感染症情報センター 「インフルエンザの流行状況(2018-2019シーズン)」
中外製薬 「インフルエンザ情報サービス インフルエンザの脅威」
ハフィントンポスト『1回飲むだけのインフル新薬「ゾフルーザ」ってどんな薬? 医師に聞いた」
日本経済新聞『インフル新薬「ゾフルーザ」保険適用 服用1回でOK』
同『タミフル10代投与再開 厚労省、異常行動に注意喚起』

LINEで送る
Pocket