インフルエンザは真冬だけにあらず 〜早期の拡大と人の流れ〜

2019年11月15日のこと、厚生労働省はプレスリリースで「インフルエンザが流行シーズンに入った」と発表しました。この時期での流行入りは例年よりも早く、全ての年齢の方に注意が必要と綴られています。

そんな中、同20日発行の東京新聞朝刊にて「マスギャザリング(mass gathering)」も早いインフルエンザの流行入りに影響を与えたのではないかという記事が掲載されました。その一例として「ラグビーワールドカップ2019(以下: ラグビーW杯)」を挙げています。

これから一段と寒さを増す中で、インフルエンザの更なる拡大も予想されます。そこで今回は、例年よりも早いインフルエンザの流行から、要因として考えられることや今からでも出来る対処などを一緒に見ていくことにしましょう。

そもそも「マスギャザリング」って何?

今回、東京新聞がインフルエンザ流行の一因として取り上げた「マスギャザリング」とは、多くの人が1ヶ所に集まることを指しています。人数については様々な定義がありますが、1,000人以上を基準にするケースが多いようです。ラグビーW杯の際は、何万ものラグビーファンが全国各地の試合会場に集いました。

ラグビーW杯には南アフリカ共和国やニュージーランドなど、南半球からの参加がありました。当然ながら、そのエリアからのファンも日本を訪れています。南半球は日本を含む北半球とは季節が反対になります。ラグビーW杯は9月に開幕しましたが、南半球は冬から春に変わる頃だったと言えます。

東京新聞の記事では、まだインフルエンザの流行期にあった南半球からウィルスが持ち込まれて、日本国内で早期に流行したのではないかと見ている専門家も居るとしています。実は2018年9月に同新聞が報じた記事でも「グローバル化」がインフルエンザの流行を早めた可能性を示唆する文面がありました。

人の行き来が活発になる中で、インフルエンザが早期に拡大するのも不思議では無いように思います。しかし、今回の厚生労働省の発表によると、ラグビーW杯の試合が無かった地域でもインフルエンザの拡大があるとのことでした。

「マスギャザリング」は日常的に起こりうる

厚生労働省が行った「2019年第45週(11月4日〜同10日)の感染症発生動向調査」で、インフルエンザの定点当たり報告数が1.03となりました。流行開始の目安は1.00なので、1,03という数字をもって「流行シーズンに入った」と宣言したのです。

定点当たり報告数の多い都道府県は順に、沖縄県(4.45)、鹿児島県(2.66)、青森県(2.48)などとなっています。ここでお気づきの方もあると思いますが、今挙げた3県はラグビーW杯の試合会場とはなっていません。今回のインフルエンザが流行した理由を「ラグビーW杯」だけでまとめるのには無理があります。

しかし「マスギャザリング」は日常的に発生するものであり、それ自体がリスクになることは否定出来ないでしょう。ラグビーW杯に限らず、1ヶ所に人が集中する場面は多くあります。

例えば、人口が少ない地域に多くの観光客が訪れる場合です。沖縄県を例に挙げると、人口350人ほどの竹富島には年間50万人もの観光客が訪れると言われています。これを1日平均にすると約1,370人となります。毎日、人口を上回る観光客が居るとなれば、これも見事な「マスギャザリング」でしょう。

竹富島以外でも観光で沖縄県を訪れる方が多いです。沖縄県では、2019年第38週(9月16日〜同22日)にインフルエンザの定点当たり報告数が52.22人となり、警報が発令されました。近年は報告数が春でも1.00を下回らない状態とのことで、流行は常に続いていると言えます。

また、満員電車も「マスギャザリング」と考えることが出来ます。今回の報告で、首都圏では東京都でインフルエンザの定点当たり報告数が1.11となりました。東京都はラグビーW杯の試合会場にもなりましたが、主要な路線で満員電車が多く発生しています。狭い空間での感染も十分に考えられます。

交通機関が発達し、海外への旅行や長距離の移動が活発になる中で、インフルエンザを含めた感染症リスクが高まっていると言われています。東京新聞の記事では、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでの感染症対策を心配する声がありました。

試合会場周辺に限らず、ホストタウンや合宿地となっている自治体も対策を急ぐ必要があるでしょう。勿論、多くの方の利用が見込まれる交通機関や宿泊施設周辺も対応が必要です。東京新聞では「医療機関の国際化をどう進めるかが改めて問われている」という大学教授の意見も掲載しています。

感染症が持ち込まれるのも辛いですが、その地で起きている感染症に訪問客や観光客がかかってしまうということも避けたいものです。

重症化を防ぐためにもワクチンを

私にとってインフルエンザ予防接種は極めて重要なもので、2019年は10月中旬に受けてきました。受ければインフルエンザにかからないというものではありませんが、仮にかかった場合でも重症化しにくくなるという点を買っています。

厚生労働省の報告によると、流行を宣言した第45週でのインフルエンザによる入院患者数は71名(全国約500ヶ所の基幹定点医療機関からの報告数)となり、40〜49歳を除く全ての年代で入院患者が発生したとありました。実は第41週(10月7日〜13日)以降、入院患者は常に居る状態となっています。

また、ICU(集中治療室)に入った方や人工呼吸器を利用した方、CTやMRIなどの精密検査を受けた方など、重篤な症状を伺わせる報告もされています。これからインフルエンザが本格的に広まるとされる中で、打てる対策は早く行うべきだと考えさせられます。

また、学級閉鎖や学年閉鎖、休校の措置を取った教育機関(保育園、幼稚園、小・中・高等学校)も、全国各地で報告されています。「マスギャザリング」とまではいきませんが、学校もある意味で1ヶ所に多くの人が集中する空間と言えます。

近年は1シーズンで複数の型のウィルスが流行すると言われるインフルエンザ。1シーズンで2回感染することも珍しくないとの話も見聞きします。こうした現状があっても何も対策をしないというのは如何なものか…と思うのは私だけでしょうか。

厚生労働省が推奨する「咳エチケット」

突然ですが、咳やくしゃみが出そうになった時、どのような体勢を取りますか。手のひらでじかに口を押さえるという方は意外と多いかと思います(私もかつてはそうでした)。しかし、この体勢は推奨されないと言われています。

厚生労働省の2019年第45週の報告には「咳エチケット」としてマスク着用を強調していますが、持っていない場合には「咳やくしゃみが出そうな時は、ティッシュや腕の内側で口や鼻を押さえて、他の人から顔をそむけて1m以上離れること」を推奨しています。

手のひらというのは、スッと出しやすい一方で、色々なものに触れやすいものです。口や鼻を押さえて咳やくしゃみを受け止めたその手で触れた様々なものを介して、ウィルスの感染が拡大する可能性があります。ついそうしてしまった場合には、すぐに手を洗うようにしましょう。

腕の内側はそう簡単にあちこち触れるものではないため、手よりも有効とされますが、あくまでも「応急手段」であって、マスクやティッシュが望ましいとされています。腕の内側で咳やくしゃみを受け止めた場合、その時に着ていた服は洗濯やクリーニングにかけておきたいものです。

厚生労働省は他にも「咳をしている人にマスクの着用をお願いすること」も咳エチケットの一例としています。しかし、マスクをするのが嫌という方も多く、あるアンケートでは「メガネが曇る」「(ゴムが当たって)耳が痛くなる」「息苦しい」などという意見が上がっていました。

近年は「メガネが曇りにくい」「耳にやさしくフィットする」「マスクと口との空間を十分にもたせている」などといった配慮がなされたマスクも多く出回っています。万人受けするマスクというものは無いかも知れませんが、健康に暮らすという観点から見ても、欠かせないものではないでしょうか。

今月のまとめ

2019年は11月中旬にインフルエンザの流行シーズンに入りました。例年よりも早い流行に驚く方も多いでしょうが、入院や学級閉鎖などは全国各地から報告されています。

今回のインフルエンザの拡大の要因のひとつとして「マスギャザリング」を挙げる方もいます。1ヶ所に多くの人が集中することによって、感染が拡大する可能性は否定出来ません。2019年はラグビーW杯があり、多くの外国人が日本を訪れましたが、満員電車などでマスギャザリングは日常的に発生しています。

インフルエンザの拡大や重症化を防ぐ意味でも、予防接種は有効です。近年は1シーズンでインフルエンザに2回感染するケースも珍しくないため、受けられるのであれば是非ともそうした方が良いでしょう。

厚生労働省は、咳やくしゃみをする際にマスクを着用したり、ティッシュや腕の内側で受けたりすることが大事だとしています。つい、手のひらで受けてしまうこともありますが、あれこれ物に触れやすい部位なので、すぐに手洗いをするようにしましょう。

インフルエンザはこれから更に猛威をふるうことでしょう。1人ひとりが出来る対策を取ることで、拡大を少しでも防いでいきたいものですね。

参考文献(記事)

東京新聞(2019年11月20日付朝刊)『こちら特捜部 インフルエンザ早くも流行なぜ 〜マスギャザリング 東京五輪 対策は〜』

参考ウェブサイト(ホームページ)

厚生労働省『インフルエンザ(総合ページ)』
同『2019年11月15日 インフルエンザの発生状況について(流行シーズン入り)』(PDFファイル)
日本経済新聞『竹富島が入島料300円、9月から環境保全に』
J-CASTニュース『【男と女の相談室】「とっさの咳は手ではなく腕に」薬剤師のイラスト注意喚起が話題に』
@niftyニュース『マスクの嫌な点ランキング 1位はメガネが曇る、2位は耳が痛くなる』