疑心暗鬼の悲しい食事 〜見えない恐怖と戦うということ〜


2019年のマンスリーコラムは明るい話題から…と思っていたのですが、残念ながら叶いませんでした。2019年1月9日のこと、ある女性向け下着通販会社が自社のサプリメントの広告に不適切な表現があったことで大炎上となり、謝罪する事態となりました。

問題のサプリメントは「情熱的な感情を呼び起こす男女兼用ラブサプリ」などと謳っており、その使用方法の中で「こっそり飲ませる」「お料理やお菓子に混ぜてこっそり色仕掛け」などの表現を使っていました。

皆様、この中に出てきた「こっそり」という表現にどのような思いが芽生えましたか? 私は「恐怖」「犯罪性」「軽率」が真っ先によぎりました。この商品がカフェインを受け付けない方にとって危ない商品だったことも手伝って、そういう思いに至りました。

そこで今回は「こっそり混ぜられた」「知らずに(気づかずに)口にしてしまった」という恐怖について、カフェインを含むものを通じて考えてみることにします。

あのサプリメントはカフェインの宝庫だった

批判を受けて販売中止となったサプリメントには、ココアやマカ、ムクナなどの粉末が入っていたそうです。ココアは言わずと知れた「カフェインを含むもの」ですね。実際の数値までは不明ですが、原材料欄の早い段階に書かれていれば危険度は高くなります。

多くのサプリメントは打錠やカプセルといった形で販売されていますが、今回のサプリメントは粉末状で瓶に入っていました。料理や飲み物にも入れやすいということで問題の「こっそり」という表現が出たのでしょう。

ココア(カカオ)と言えば、カフェインだけでなく、チラミン(赤ワインやチーズなどに含まれる物質)や、ニッケル(金属アレルギーの元凶とも言われる物質)が含まれています。チラミンやニッケルもアレルギー物質ですので、かなり危険なものと言えるでしょう。

勿論、ココア以外の材料にも注意が必要です。アレルギーを引き起こすものや、大量摂取を避けるべきものもあるかも知れません。「相手の気を引きたいから」と安易に使うことは許されません。

今回の商品が「ラブサプリ」と謳っていたとあって「デートレイプドラッグ(性的暴行目的で意識を奪い、抵抗できない状態にするための薬物)」を思い浮かべた方もあったと思います。「こっそり」なんて言われようものなら、怖さが先立つのも当然です。

飲食物に何かを「こっそり」混ぜた上での犯罪は多くあります。昏睡(こんすい)強盗や殺人などでもそういったケースがありました。広告を作るにあたって、製作者側でそこまでの意識が働かなかったことに強い憤りを感じます。

「嫌いな食べ物をこっそり」とは意味が違う

よく、野菜嫌いの子どもに野菜を食べさせようと、子どもが好む料理に「こっそり」野菜を混ぜ込むという話を見聞きします。「人参をすりおろしてハンバーグに」「ピーマンを細かく刻んでカレールーに」…思い当たる方はありませんか?

「こっそり入れる」ということは、ある意味で「期待していたものから状態を変えて騙す」ようなものかも知れません。そういった手法が今尚取られているのは、対象となるものが「あくまで『嫌い』で終わるものだから」という意識があるからではないでしょうか。

単なる「嫌い」であれば、嫌いなものを口にした時に「嫌な気分になる」で終わるという感覚があると思います。気分を害するだけで、それが直接に病気を引き起こすものではないという意識もあるかも知れません。

「嫌いな食べ物が好きになってくれたら御の字」という感覚もあるのでしょう。しかし、「食べたら生命に関わる」「食べたら体調面での悪影響が出る」というものを「こっそり」混ぜたところで「好き」になる訳などありません。

体調に重大な悪影響を及ぼす食べ物を何かに混ぜれば、それを好きにさせられると思う方が間違いです。下手をすれば「食べる」という行為にも恐怖心を抱かせかねません。生きる根幹でもある「食べる」という行為や意味を大事にしたいものです。

こっそりでは無いけど、ココアが入っていて大ピンチ

今回はサプリメントが問題となりましたが、ココアが意外な食品に入っているケースは、思いの外多くあるのです。中には「着色料」として使われているケースもあり、ココア(カカオ、チョコレートなど)を受け付けない方にとっては油断が許されないのです。

実際に、私が見て驚いたものは次の4つです。

・ソーセージ(ウインナー)
・煎餅(せんべい)
・コロッケパン
・眠気覚まし用のガム

まず、ソーセージ(ウインナー)ですが、「ウインナーコーヒー」「ウインナーココア」というものでは無く、一部ではあるものの、ごくごく一般的なウインナーに使われていた事例を把握しています(ソーセージを先に出したのもそういう理由です)。

実際に目撃した品は、発色剤となる亜硝酸ナトリウムを使った品でしたが、そこに加えてのココアに驚きました。今頃のソーセージ(ウインナー)は茶色く、味も濃いものが多いので、少々のココアでは気づかないということなのでしょう。

次に、煎餅ですが、「ざらめ」や「黒糖」を使った一部の品にココアの表記が見られました。黒糖だと色が近いので混ざっているかも?と予測することも出来ますが、ざらめは比較的白っぽいため、予測が難しいです。そのような商品があることに驚きました。

また、コロッケパンは市販のもので、コロッケにかかったソースに使われていた可能性があります。もし、その通りだったとすれば、ソースを買う時にも注意が必要であると感じました。勿論、ソースを使った品にも注意が必要となるでしょう。

最後の眠気覚まし用のガムは、元々がカフェインを含むものではあるのですが、それとは別に着色料としてのココアが使われている品があることを把握しています。「カフェイン」だけの品以上にカフェインを含むガムになるのだろうと推測出来ます。

こうして見てみると、メーカー側としては「こっそり」入れた訳ではないものの、カフェインを気にする方にとっては意表を突かれる品があることが分かります。

過去のコラムでは、カレーやハヤシのルーにココアが入っているケースも紹介しました。カレーやハヤシを作る段階でチョコレートやインスタントコーヒーを加えるケースもあったりするので、思わぬ「こっそり」に注意したいところです。

自分で調べることが最大の防御策

当サイト内でも何度も綴っていますが、カフェインを含むものから身を守るために重要なことは「原材料や成分をしっかりチェックすること」に尽きるでしょう。見た目だけで「大丈夫」と判断することは危ないように思います。

疑心暗鬼になりすぎることはある意味で悲しいことなのですが、「念のため」「万が一を考えて」「大事を取って」という意識を持って行動することが、危険の回避につながります。

この考え方は、カフェインに限らず、摂取を避けたいもの全てに当てはまるのではないでしょうか。また、宣伝広告や口コミなどに対して「あれっ?」と思ったとすれば、その感覚を大事にしてみても良いかと思います。

今月のまとめ

2019年1月。ある企業が販売したサプリメントの宣伝広告がインターネット上で大炎上する事態が発生しました。粉末状だったことから「こっそり混ぜる」といった表現や、それを促す動画などを公開したことが原因でした。

問題のサプリメントには、ココアが含まれており、カフェインを気にされる方にとって非常に怖いものでした。そのサプリメントを混ぜられたら…と思うと、食事という行為さえ怖くなるかも知れません。

犯罪の中には「飲食物に何かを混入して」行うというものもあります。デートレイプドラッグや昏睡強盗、殺人などを思い浮かべる方もあるでしょう。サプリメントであっても、安易に行ってはなりません。

好き嫌いの克服で該当の食べ物を「こっそり」混ぜる方もあると思います。上手く行けば御の字なのでしょうが、期待していた状態を変えられるというのは、ある意味で騙すことでもあります。慎重な対応が求められます。

メーカー側としては「こっそり」ではないものの、消費者側からすれば意表を突かれる混入事例があります。見た目だけにとらわれずに原材料や成分を常にチェックすること、そして「あれっ?」と思った際にその感覚を大事にすることが肝心だと思います。

【参考ウェブサイト(ホームページ)】

ピーチ・ジョン公式通販サイト
同『健康補助食品「ラブポーション」の商品説明及び広告表現についてのお詫び』
朝日新聞デジタル『ピーチ・ジョンがサプリを販売中止 「こっそり」に批判』
BuzzFeedNews『ラブサプリ「こっそり混ぜて色仕掛け」 批判殺到でピーチ・ジョンが謝罪、販売中止』