【シリーズ】エナジードリンクがもたらした功罪 〜4. もはや飲む時代ではなくなったのか〜

当サイト『カフェインアレルギーと歩む道』では、不定期のシリーズとして『エナジードリンクがもたらした功罪』と題して、コラムを展開しています。「エナジードリンク」とあるだけに、当然のことながら「飲み物」を取り上げるものだと思ったことでしょう。

しかし、今回は「飲み物ではないエナジードリンク」を取り上げます。「飲み物ではないエナジードリンク」という発想は私自身も持っていませんでした。これも技術や時代の変化でしょうか、驚くような品が登場していると言うのです。

そこで今回は「飲み物ではないエナジードリンク」の実態や、飲み物ではないことで予測される事態や懸念について綴ってまいります。

世界中で総売上1億本以上の「吸うエナジードリンク」とは?

2019年2月、株式会社イーグルエナジー・ジャパンは、日本総代理店として世界初の吸引型エナジードリンクを日本で販売し、神奈川県横浜市で開催される展示会にも出展するというプレスリリースを発表しました。

この話題はすぐにインターネット上で話題となり、情報サイトやニュースサイトでも広く取り上げられました。やはり、冒頭にも綴った通り「吸う(飲み物ではない)」という点に関心が集まったのではないでしょうか。

吸う時点で「ドリンク(飲み物)」ではありませんが、飲むよりもダイレクトにカフェインを摂取できると考える方は多いでしょう。これは同時に、カフェインは熱しても消えず、空気中にも舞う可能性があることを示唆しています。

プレスリリースによると、この商品はカナダで開発され、世界中で既に1億本を売り上げたとあります。また、イーグルエナジー・ジャパン社によると、この商品は「カフェインミストサプリ」と位置付け、サプリメントの扱いとしたいようです。

総代理店による日本での正規発売は2018年11月に始まり、現在は楽天市場にて販売を行っています。しかし、インターネットで検索すると、2017年頃から国内でも同商品を試してみたという記事や動画の投稿が見られるようです。

また、楽天市場以外でもAmazonでも(非正規代理店経由ですが)販売されていたり、類似品が出回っていたりするため、プレスリリースを通じて正規代理店による販売ルートを確立する姿勢を明確にしたかったのでしょう。

イーグルエナジー・ジャパン社の設立は2018年8月とのこと。展示会の出展も横浜市が初めてではなく、2018年11月から行っているとのことでした。こうした積極的なPRが今後どのように受け止められるかが注目されます。

電子タバコとも違う「吸うエナジードリンク」の実態

ここからは「吸うエナジードリンク」の特徴を見ていきましょう。尚、ここで取り上げる「電子タバコ」は日本でも販売されている加熱式タバコを含めた全般的なものといたします。

今回の商品は電子タバコに似た形状で、液体カートリッジを内蔵したものとなっています。充電式ではなく、規定回数を吸いきったら新しい本体を買うという流れのようです。

近年、電子タバコによる火災や爆発事故の情報が聞かれるようになり、死亡事故となったケースも耳にします。今回の商品は「発火の恐れのない単位のリチウムバッテリーを使用している」と掲げていますが、完全に安心しきるのは早計かも知れません。

また、電子タバコとの違いとして、タバコ特有の有害物質ニコチンを発生させないこと、糖分(特に人工甘味料)やカロリーを含んでいないこと、ガラナや高麗人参などといった天然成分を使用していることを挙げています。

使用しているもののうち、高麗人参に対して「漢方」「薬膳」「健康的」といったイメージを持つ方は多いかと思います。タバコで高麗人参を含むものというのは特に耳にしませんので、物珍しさも先立つかも知れません。

この商品は、配合している成分を気化する(吸う)ことによって、即効性と持続性が高まるとしており、この点については、電子タバコだけでなく紙巻タバコにも通じるでしょう。但し、吸引摂取が安全であるとしている点には後述の通り、疑問が残ります。

今回の商品にはよくある電子タバコ同様、様々な「フレーバー」が用意されています。「吸うエナジードリンク」と謳うだけあって、公式サイトでもエナジードリンクフレーバーが人気かつ定番であると明記されています。

ライチやブルーベリーなど、女性にも好まれやすい甘いフレーバーもあるそうで、利用者の年代も下降するものと考えられます。対象年齢を定めていないため、日本でも未成年での利用が十分にあり得るでしょう。

吸うことが本当に安全? 懸念されるカフェイン依存

ここまで、今回の商品が掲げる大きな特徴を見ていきましたが、私にとっては疑問に残る点がいくつかあります。その点についてここでは見ていくことにしましょう。

まずこの商品は、個人差があるとはしながらも、1本につき約400回吸うことが可能とされています。また、10回から20回の吸引で、エナジードリンク1本分に相当するカフェインを摂取できるともいわれています。

この商品の1本の値段が1,580円(税込)からとなっていますので、1本200円のエナジードリンクを20本買うことを思えば割安であると考える方もあるでしょう。しかし、その割安感がかえって依存を高めるのではないかという懸念があります。

今回の商品は、公式サイトでは単品だけでなく、3本セットでも販売されています。まとめ買いした分だけ吸えるということになるのです。3本セットを買った場合「1本吸ってもまだ2本ある」という感覚で安易に吸ってしまう方もあるのではないでしょうか。

公式オンラインショップでは、特に購入時の数量制限を設けておらず、1日の吸引量の目安も明記していません。そのため、過剰に吸ってしまうことにためらいを覚えない方も出てしまうでしょう。

今回の商品は、1本当たりのカフェイン含有量も明記されていません。つまり1回吸ったところでカフェインが体内にどれだけ入るかというものも明示されていないのです。そもそも、エナジードリンク自体がカフェイン含有量にバラつきがあるものです。

それでなくても、カフェインを摂取していく中で「だんだん効かなくなってくる」という感覚に陥る方もあります。このような場合「昨日までは10回吸えば良かったものが今日は20回でないと…」という風に、量がかさんでいくことも容易に想像出来ます。

仮に高濃度のカフェインが入っていたとすれば、過剰に吸うことが命の危険につながるかもしれませんね。この商品で万が一の事態が発生した時、本当に「自己責任」という言葉だけで済まされるのでしょうか。

喫煙が好まれない時代に登場したということは

近年、日本でも禁煙を勧める動きが強まっています。2018年7月に健康増進法の一部を改正する法律が可決され、原則屋内禁煙(一部対象外)や受動喫煙の対策が強化されることとなりました。この改正は2020年までに順次施行されます。

これよりも厳しい条例が東京都で順次施行されています。東京都受動喫煙防止条例では、国が指定する以上に禁煙となる範囲が広くなっており、それがひいては禁煙につながるのでは?という期待も持たれているようです。

しかし、いくら禁煙を叫んでも100%の禁煙は叶わないのでは?という意見も多くあります。日本禁煙科学会では、いわゆる「岩盤層」という、何があっても喫煙を止めない層があることを指摘しています。それだけ「ニコチン中毒」が進んでいることも言えます。

喫煙をされる方にとって、タバコ(電子タバコを含む)という存在や、それを吸うという動作に「カッコ良さ」を覚える方もあるのかも知れません。タバコの形を模したお菓子やおもちゃで遊んだことがある方も多いことでしょう。

また、エナジードリンクには、スポーツや音楽イベントなどとの融合がよく見られ、これらも「カッコ良さ」につながっていると考えられます。「カッコ良さ」と思える要素が今回のような「タバコ型の吸うエナジードリンク」の誕生に一役買ったのでしょう。

禁煙が進む時代において、タバコの代わりに吸うエナジードリンクを使えば良い…それは正しいことなのでしょうか? それはそれで新たな弊害はないでしょうか? これはニコチンを含まないとされる電子タバコでも同様の疑問にたどり着きます。

今回取り上げた商品を含め、「吸うエナジードリンク」というものはまだ登場して間もない商品です。今後、研究や調査が進められるものと考えています。この場で挙げた疑問は「問題提起」としてご覧いただければと思います。

今月のまとめ

エナジードリンクが広まる中で、電子タバコのような形をした「吸うエナジードリンク」が販売されています。日本上陸前に1億本も売り上げた商品があり、日本でも正規総代理店を設置して販売促進に向けた動きも見られます。

今回取り上げた商品では、ニコチンや糖分、カロリーを含まず、天然成分を用いていました。女性や子どもにも親しまれそうなフレーバーもあり、エナジードリンクを買うよりも割安で、即効性や持続性が高いことも謳われていました。

しかし、このことが「カフェイン依存」を強めてしまうことは容易に想像出来ます。また、1本あたりに含まれるカフェインの量や1日の摂取目安量などの情報が無いことから、高濃度かつ高頻度での吸引で思わぬ事態になることも予想されます。

「カッコ良さ」を求める余り、取り返しの付かないことになってはいけません。「自己責任」のひと言だけでは片付けられない問題を含んでいます。今後、研究や調査などが進み、実態が解明されることを願うばかりです。

参考ウェブサイト(ホームページ)

EAGLE ENERGY Japan
PR TIMES『「吸うエナジードリンク!?」世界初の吸うエナジードリンク EAGLE ENERGY(イーグルエナジー)が遂に日本解禁!」
Eagleenergy 楽天市場店
BBCニュース『電子たばこ爆発で男性死亡、破片が頭に 米フロリダ州』
NHKオンライン クローズアップ現代+『急増! カフェイン中毒 相次ぐ救急搬送 いま何が』
(※ テレビでは、NHK総合で2017年9月21日に放送)
厚生労働省『受動喫煙対策』
東京都福祉保健局『東京都受動喫煙防止条例』
日本禁煙科学会